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【映画祭】若者のすべて [観る(映画2006)]

  
『山猫』や『太陽がいっぱい』を観るたびに、”育ちの悪い野心に
燃えた美しい男”という役柄でアラン・ドロンにまさる人はいない
んじゃないかと、今のハリウッド・スターを頭にめぐらせるのだけ
ど(『キング 罪の王』のガエル君はどうだ?期待しているぞ)、
『若者のすべて』でのアラン・ドロンは故郷や家族を想う繊細でナ
イーブな(もちろん美しい)青年を演じていて、たまらなく良かっ
たのだ。
ボクシングの試合で対戦相手ではなく恋人を辱めた兄を頭に浮かべ
て闘ったことを悔いて涙を流すシーンなど、、、アホだと思うけど、
私は胸が絞めつけられて悶えた。
上映後のティーチインで、私と同じようなことを思った人もいたの
か、「当時のアラン・ドロンの人気について」質問が出たけれど、
「当時はフランス映画にチョイ役で出てただけで、ブレイクしたの
は『山猫』でのタンクレディ役」だったそうだ。
  
で、ヴィスコンティ1960年の作品『若者のすべて』です。
貧困から抜け出すために一族で南部の小さな村からミラノに出てき
たパロンディ家の5人兄弟の辿る悲劇を、3時間というスケールで
描いた作品ですが、退屈することはありません。
作品は兄弟の名前が付いた5つのパートに分かれ、金と女に身を滅
ぼしてゆく次男シモーネと、シモーネを憎みながらも彼を護ろうと
する三男ロッコの関係が中心となるものの、それぞれのパートの中
で兄弟の姿が描かれ、彼らが支え合って精一杯生きていることが伝
わってくるのですが、にも関わらず彼らには転落の道しか示されて
いません。やりきれなさがつのるばかりでした。
ティーチインで、少しだけ希望が感じられるラストシーンから、作
品では描かれなかった彼らのその後はどうなったか、末男ルーカだ
けでも故郷に帰ることができたと思うか(質問者の郷愁だ)の質問
が出たけれど、ゲストのアドリアーナ・アスティさん(この作品で
デビューし、後にベルトリッチの『革命前夜』で主演)は、「生活
が困難な南部に彼らが帰ることはない」ときっぱりおっしゃってい
て、この家族の物語に内包されたイタリアの南北の経済格差の問題
をより深く考えさせられたのです。
 
 

サイン会でのアドリアーナ・アスティさんとお隣は彼女の夫で『若
者のすべて』で助監督をしていた方(お名前失念)。
ティーチインでは、見た目普通のおじさん達から質問の手が挙がる
挙がる。彼らが若い頃、ヴィスコンティを観るってことは、特別な
ことではなく普通に映画を観ることだったのですね。
 
 
 (大阪ヨーロッパ映画祭 2006/11/11@大阪国際交流センター)
 
 


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